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Art Quiz

美術は、疑問から面白くなる。絵画の見方から、作家たちの不思議な行動まで。楽しく学べる1問1答。
気になった問いを入口に、美術の世界をめぐってみませんか?

1945–1960 | 抽象表現主義の美術史クイズ!

Q. 抽象表現主義って、何を表現しようとしたの?

抽象表現主義は、1940年代から1950年代のニューヨークで発展した美術の動向です。ポロック、ロスコ、デ・クーニングらは、伝統的な構図や描写の決まりから距離を取り、線、色、絵の具の動き、大きな画面などを通じて、新しい絵画の可能性を探りました。第二次世界大戦の経験を経て、人間の感情や存在について考えた作家もいました。

名前に「抽象」と付いていますが、作品の見た目は驚くほど多様です。ポロックの複雑な線、ロスコの色の面、デ・クーニングの人物像を一つの様式としてまとめることは難しいでしょう。共通するのは、既存の絵画表現を押し広げ、個人の経験を大きなスケールで表そうとした姿勢です。どの作品にも同じ答えを求めず、それぞれの画家が何を大切にしたのかを見ると面白さが広がります。(参照:MoMA|Abstract Expressionism / メトロポリタン美術館|Abstract Expressionism)

Q. 戦後、なぜニューヨークが美術の中心として注目されたの?

20世紀前半まで、近代美術の中心地として大きな役割を果たしていたのはパリでした。第二次世界大戦の前後には、ヨーロッパからアメリカへ渡った芸術家や知識人が多く、ニューヨークで新しい交流が生まれました。アメリカの画家たちもシュルレアリスムやヨーロッパの抽象絵画から刺激を受け、独自の表現へ発展させていきます。

1940年代から1950年代にかけて、ギャラリー、美術館、批評家、雑誌が新しい作品を紹介し、ポロックやロスコらは国際的な注目を集めました。ニューヨーク近代美術館も早い時期から作品を収集し、その評価を後押ししています。パリの芸術活動が消えたわけではありません。戦後の美術を語るうえで、ニューヨークが以前よりずっと大きな存在感を持つようになったのです。(参照:メトロポリタン美術館|Epic Abstraction / MoMA|Abstract Expressionist New York)

Q. 抽象表現主義の絵は、なぜあんなに大きいの?

抽象表現主義には、人の背丈を超える大きな絵画が数多くあります。例えばポロックの《One: Number 31, 1950》は、横幅が約5.3メートルもあります。小さな画面を覗き込むときとは違い、目の前いっぱいに線や色が広がることで、鑑賞者は作品を全身で受け止めるようになります。大きさそのものが、表現に深く関わっているのです。

ポロックにとって広いキャンバスは、身体を動かしながら描くための場でもありました。ロスコやニューマンも、大きな色面を鑑賞者と向き合わせる作品を発展させています。どの画家も大きさを同じ目的で使ったわけではありません。美術館で実物を見る機会があれば、少し離れたり近づいたりして、画面との距離によって印象が変わることを確かめてみてください。(参照:MoMA|One: Number 31, 1950 / ワシントン・ナショナル・ギャラリー|Teaching Art Since 1950)

Q. ポロックは、なぜ床にキャンバスを置いて描いたの?

ジャクソン・ポロックは1947年頃から、張り枠に固定していないキャンバスを床に広げ、絵の具を流したり、垂らしたり、振りかけたりする方法を発展させました。筆で絵の具を塗る代わりに、棒や硬い筆、缶に入った塗料なども利用しました。キャンバスの四方を歩き回れるため、画面のあらゆる方向から手を加えられます。

この制作方法では、手首だけでなく腕や身体全体の動きが、絵の具の線として残ります。ポロック自身も、床で制作すると絵画に近づき、四方から関わることができると説明しています。完成した画面には、彼がどのように動き、どのように塗料を扱ったかという痕跡が刻まれています。制作風景を記録した映像を見ると、なぜ床を選んだのかが理解しやすくなります。(参照:MoMA|One: Number 31, 1950 / MoMA|Pollock, One: Number 31(音声解説))

Q. ポロックの絵は、絵の具を適当に垂らしただけなの?

ポロックの絵には偶然生まれる形があります。流れる塗料がどこに落ち、どのように広がるかを、完全に予測することはできません。それでも、塗料の粘り具合や手の動く速さ、落とす高さ、重ねる色によって、線の太さや密度は変わります。画面のどこに絵の具を集め、どこに余白を残すかという判断も制作に関わります。

《One: Number 31, 1950》を近くで見ると、細い線、太い線、色の重なり、絵の具がたまった場所などが複雑に共存しています。ニューヨーク近代美術館の解説でも、ポロックの制作は偶然と制御の両方を含むものとして説明されています。線の一本一本を追ってみると、無造作に見えた画面の中から、異なるリズムや密度の変化が見えてきます。(参照:MoMA|The Processes and Materials of Abstract Expressionist Painting / MoMA|Pollock, One: Number 31(音声解説))

Q. 「アクション・ペインティング」って、どういう意味なの?

アクション・ペインティングは、絵を描く行為そのものに注目する考え方です。1952年、美術批評家ハロルド・ローゼンバーグは、アメリカの新しい絵画を論じるなかで、キャンバスを画家が行為する場所として捉えました。完成した絵を鑑賞するだけでなく、描くときの決断、動作、試行錯誤にも意味があるという視点です。

ポロックの制作風景は、この考え方をイメージしやすい例でしょう。デ・クーニングも、描いては削り、塗り重ねる過程を作品の表面に残しました。アクション・ペインティングという言葉は、抽象表現主義のすべてを説明する名称ではありません。ロスコのように静かな色面を追求する作家もいます。作品の表面に残った行為の痕跡に注目すると、見方が変わってきます。(参照:ワシントン・ナショナル・ギャラリー|I think I see… / MoMA|The Processes and Materials of Abstract Expressionist Painting)

Q. ロスコは、なぜ大きな色の四角形を描いたの?

マーク・ロスコは1940年代に神話や人の姿を思わせる形を描いていましたが、1949年頃から、ぼんやりした輪郭の色の四角形を重ねる画面へと進みました。形を単純にすることで、色と色の関係、明るさ、画面に漂うような奥行きが強く感じられるようになります。近くで見ると、一見平らな色の面にも薄い塗り重ねや細かな変化があります。

ロスコが求めていたのは、色彩の組み合わせの美しさだけではありません。悲しみや喜び、切迫感といった、人間に深く関わる感情を絵画で伝えようとしていました。作品に描かれた物の名前を探す代わりに、色の広がりや境界をゆっくり見つめると、絵から受け取る印象の変化を感じられるかもしれません。(参照:ワシントン・ナショナル・ギャラリー|Rothko, Untitled(1949) / ワシントン・ナショナル・ギャラリー|Rothko(作品解説))

Q. ロスコの絵は、近づいて見たほうがいいの?

ロスコは大きな作品を、鑑賞者が間近で向き合うことを意識して制作しました。広い色面が視界に入ると、画面を一枚の絵として眺める感覚に加えて、その色の中に包まれるような感覚も生まれます。離れた位置から見ると四角形の配置がよくわかり、近づくと色のにじみや塗り重ねが目につきます。

ワシントン・ナショナル・ギャラリーの教材では、ロスコが作品を近くから見てもらうことを望み、大きさによって鑑賞者との親密な関係を生み出そうとしたことが紹介されています。鑑賞するときは、展示室の案内や作品の保護に配慮しながら、距離を変えて眺めてみてください。画面の大きさや色の変化が、自分の感覚にどう働くかを確かめる楽しみがあります。(参照:ワシントン・ナショナル・ギャラリー|Teaching Art Since 1950 / ワシントン・ナショナル・ギャラリー|Rothko, Untitled(1949))

Q. バーネット・ニューマンは、なぜ画面に縦の線を描いたの?

バーネット・ニューマンの絵画では、大きな色の面を縦の帯が横切っています。彼はこの帯を「ジップ」と呼びました。1948年の《Onement I》で、赤い画面の上に置いたマスキングテープをそのまま残した縦の帯が重要な発見につながりました。一本の線のように見えても、周囲の色面を分けると同時に結びつけ、画面全体の構造を作っています。

ニューマンは、その可能性をさらに追求して、巨大な絵画へと発展させました。モンドリアンのような幾何学的抽象と比べても、縦の帯と広い色面の関係は独特です。作品の前に立つと、帯の位置や幅によって、画面の広がり方が変わって感じられます。何が描かれているかという問いから少し離れて、一本の線が空間の感じ方をどう変えるかに注目すると面白い作品です。(参照:MoMA|Barnett Newman, Onement I)

Q. デ・クーニングは、なぜ女性の姿を激しく崩して描いたの?

ウィレム・デ・クーニングは抽象的な絵画を制作するなかでも、人の姿を繰り返し描いていました。代表作《Woman I》(1950〜1952年)では、女性の顔や身体が、勢いのある筆触や複雑な色の重なりによって大きく変形しています。彼は長い時間をかけて描き直し、絵の具を削り、再び重ねることを繰り返しました。画面の激しさには、そうした制作の過程が刻まれています。

当時は抽象絵画が重要視され、人の姿を描くこと自体が議論の対象になっていました。デ・クーニングは具象と抽象の境界を行き来し、人物像を描く可能性を探りました。《Woman I》はその強烈な表現が評価されるとともに、女性の描き方をめぐる批判も受けてきた作品です。絵の具の力強さと、そこに表された人物の姿を併せて考えることができます。(参照:MoMA|Willem de Kooning, Woman I)

Q. 抽象表現主義には、女性の画家もいたの?

いました。リー・クラスナーは、抽象表現主義の初期から活躍した重要な画家です。1940年代には、小さな形や記号を画面全体に散りばめた作品を制作しました。ジャクソン・ポロックの妻として紹介されることも多かった作家ですが、独自の表現を発展させ、完成した作品を切り分けて再構成する制作にも取り組みました。

当時の美術界では男性の画家が注目されやすく、女性作家の活動は長く十分に評価されない面がありました。クラスナーのほかにも、エレイン・デ・クーニングやヘレン・フランケンサーラーなど、多くの女性が戦後のアメリカ美術を豊かにしています。クラスナーの作品を年代順に見ると、同じ画家が何度も表現を変えながら制作を続けたことがわかります。(参照:ホイットニー美術館|Lee Krasner / MoMA|Abstract Expressionist New York)

Q. ポロックとロスコは、どうして同じ抽象表現主義なの?

ポロックの絵には複雑に絡み合う線があり、ロスコの絵には静かに広がる大きな色面があります。作品の見た目は大きく違います。抽象表現主義は、共通の描き方を守るグループとして始まった運動ではなく、1940〜50年代のニューヨークを中心に活動した、関心の近い複数の作家をまとめて呼ぶ名称です。

美術史では、ポロックやデ・クーニングのように描く動作が目立つ表現と、ロスコやニューマンのように色の広がりや空間を重視する表現が、よく対比されます。この区分は理解の手がかりになりますが、実際の作品にはもっと複雑な違いがあります。抽象表現主義という言葉を知ったら、次は作家ごとの違いを比べてみてください。そこから一つの時代が、ずっと多彩に見えてきます。(参照:メトロポリタン美術館|Abstract Expressionist Drawings / MoMA|Abstract Expressionism)

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