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Robert Mangold

ロバート・マンゴールド

アメリカ合衆国 / 1937– / ミニマリズム/抽象絵画

Robert Mangold in “Balance” – Season 6 – “Art in the Twenty-First Century” | Art21
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ロバート・マンゴールド(Robert Mangold)は、幾何学的な輪郭、鉛筆の線、抑制された色彩を通じて、絵画の形と支持体の関係を問い続けたアメリカの画家です。壁面を思わせる初期作から輪郭を持つキャンバス、円や柱を扱う連作まで、画面を成立させる要素そのものを制作の主題にしました。

ミニマリズムと同時代に活動しながら、マンゴールドの作品には手描きの線や塗りの痕跡が残されています。本記事では、建築的な初期作品から変形キャンバス、連作における形の変化をたどり、簡潔な構成の中にある線、色、支持体の関係を読み解きます。

生涯と制作の背景

マンゴールドは1937年、ニューヨーク州ノース・トナワンダに生まれました。イェール大学で美術を学んだ後、1962年にニューヨークへ移り、MoMAで警備員や図書館助手として働きます。この時期にソル・ルウィットやロバート・ライマンらと知り合い、同時代の作家たちの実践に触れました。

1960年代初頭の作品は、壁、窓、床、仕切りといった建築的な要素を、簡潔な色面や線へ置き換えていきます。絵画を外部の景色を映す窓としてではなく、壁面に取り付けられた物体として意識させる試みでした。1965年にフィッシュバッハ・ギャラリーで初個展を開き、1966年にはユダヤ博物館の「Primary Structures」に参加します。

マンゴールドはミニマリズムの展開と同時代に活動しましたが、作品は工業製品のように冷たく均質な形を並べることだけを目指してはいません。鉛筆で引かれた線、薄く塗られた色、画面の輪郭のずれが、作家の手と制作時間を残します。

1968年頃からアクリル絵具を用い、合板やメゾナイトにローラーで塗る方法を採り入れます。ほどなくキャンバスへ移り、1970年には長方形から外れた形のキャンバスを制作し始めました。支持体そのものが曲線や斜線を含むと、絵画の外縁は構図を決める線として働きます。

輪郭と支持体

マンゴールドの作品では、キャンバスの形と、その上に描かれる線が互いに関係します。輪郭を持つキャンバスは、四角い画面に図形を描くのとは異なり、支持体の端そのものが構図に参加します。外形は画面の内外を分けると同時に、内側の線と呼応します。

「曲線領域」や「周辺」などの連作では、曲線や斜線が画面の端に沿い、形を完全に閉じず、空間へ続くような感覚を生みます。形は明快でありながら、どこから始まり、どこで終わるのかが一瞬では決まりません。鑑賞者は外縁と内部の線を行き来し、両者の距離を測ることになります。

鉛筆線は、色面の上に重ねられる装飾ではありません。輪郭を示し、面を分け、時には色面からわずかにはみ出すことで、描く行為と設計の両方を示します。線の不均衡は、幾何学を手作業から切り離さない要素です。

円、楕円、十字、柱の形を扱う後年の作品でも、一つの図形を中心に据えて終わりません。線が形の内側を横切ることで、図形の安定と不安定が同時に見えます。

色と絵画の物質性

マンゴールドの色彩は限られた範囲に抑えられ、形の構造を前面に出します。しかし色は単なる塗り分けではありません。黄土色、灰色、赤、青などの面は、支持体の質感や塗りの薄さと結びつき、見る距離によって異なる強さを持ちます。

初期の合板作品では、絵具が木の表面や板の継ぎ目と接触し、素材を隠しきりません。後にキャンバスへ移ってからも、絵具は均一な層として表面を覆うのでなく、画面を作る物質として扱われます。

マンゴールドの作品はしばしば「絵画の自律性」と結びつけられますが、自足した図形としてだけ見ると、壁面や鑑賞者との関係が見えにくくなります。輪郭を持つ作品は壁から分離し、物体としての存在感を強めます。一方、線や色は見る人の位置や距離に応じて読み替えられます。

彼の抽象は、現実の建築や物体を完全に排除していません。壁や窓を描写するのでなく、壁面の広がりや窓枠の区切りに似た関係を、絵画の輪郭と内部に置き換えます。何が描かれているかより、形がどのような支持体に存在するかが手掛かりになります。

連作と変化

1960年代後半の「半円形領域」や「Wシリーズ」では、曲線を含む輪郭と簡潔な色面が試されました。切り欠かれた外形や画面を横断する鉛筆線によって、視線の動きは複雑になります。作品ごとの差異は、題材の変化より、基本形と画面との関係の変化として現れます。

1970年代には「周辺」や「6インチ」などの連作を制作します。一定の寸法や輪郭を反復し、形のわずかな違いを比較可能にする方法です。連作は同じ作品を複製するのでなく、同じ問いを異なる条件に置き直します。

1980年代以降は、複数のパネルを組み合わせた作品や、円、十字、柱状の形を主題とする作品が現れます。パネルをまたぐ線は面を一つの構図としてつなぐ一方、分割も意識させます。

2000年代以降の「Column Structure」や「Ring Image」は、初期から続く輪郭と線の探求を、より自由な曲線や大きな形へ展開します。長い制作期間を通じて、形、線、表面の均衡を更新し続けました。

作品を見るための手がかり

まず作品の外形を見てください。マンゴールドの作品では外縁が内部の線と同じくらい重要です。支持体がどこで曲がり、どこで切り取られているかを確かめると、絵画が窓ではなく、壁に掛かる物体であることが感じられます。

次に鉛筆の線を追います。線は形を説明するようでいて、同時に形を確定することを妨げます。線が曲線の外縁と近づいたり離れたりする箇所では、図形が安定しているのか、描かれつつあるのかが曖昧になります。

少し距離を取って、色面の重さや作品全体の均衡を見ます。近くでは線の手触りや塗りのむらが見え、離れると大きな形が壁面の中でどう位置するかがわかります。近づく・離れる動作が構造を開いていきます。

複数パネルの作品では、線が継ぎ目を横切るか、そこで中断するかを観察してください。画面を分割する構造と、それをつなぐ線の関係から、部分と全体の緊張が生まれます。

評価と位置づけ

マンゴールドは、ミニマリズムの時代に抽象絵画の可能性を追求し、画面の外形、内部の線、色面、支持体を一体の問題として扱いました。絵画を物体として見る傾向を受け止めつつ、描く行為や絵具の表面を残すことで、感覚的な側面を保っています。

その重要性は、ミニマリズムを絵画に移し替えたことだけではありません。一定の形を反復しながら、輪郭や線のわずかな差によって、画面がどのように成立するかを問い続けました。簡潔さは終点ではなく、見ることを細部へ戻す条件です。

壁面を思わせる初期作品から、変形キャンバス、複数パネル、円や柱の連作まで、マンゴールドは絵画の形式を広げました。抽象絵画が対象を描かなくても、支持体、空間、身体的な視線との関係を持ち得ることを示しています。

主要作品

壁面を思わせる初期作から、輪郭を持つキャンバス、円や線をめぐる連作まで、絵画とドローイングの展開を示す12点を紹介します。

1964 / 油彩、アクリル、合板、金属

1964 / 油彩、合板

1968 / 合板にアクリル

1968 / 合板にアクリル

1968 / 合板にアクリル

1968 / アクリル、合板

1968 / ドローイング

1969–70 / キャンバスにアクリル、鉛筆

1970 / キャンバスにアクリル、鉛筆

1972 / キャンバスにアクリル、鉛筆

1973 / ドローイング

1984 / キャンバスにアクリル、鉛筆

壁面を思わせる初期作から、輪郭を持つキャンバス、円や線をめぐる連作まで、絵画とドローイングの展開を示す12点を紹介します。

略年譜

1937
ニューヨーク州ノース・トナワンダに生まれる。
1956
イェール大学で美術を学び始める。
1962
ニューヨークへ移り、MoMAで勤務する。
1964
壁や窓など建築的要素を扱う初期作品を制作する。
1965
フィッシュバッハ・ギャラリーで初個展を開催する。
1966
ユダヤ博物館の「Primary Structures」に参加する。
1968
アクリル絵具を用い、合板やメゾナイトで制作する。
1970
輪郭を持つキャンバスの制作を始める。
1971
グッゲンハイム美術館で初の美術館個展が開かれる。
1980年代
複数パネル、円、十字などを用いた連作を展開する。
2006
パリのオルセー美術館で作品展が開催される。

参考資料・出典

資料確認日:2026年10月3日