ロバート・ロンゴ(Robert Longo、1953–)は、写真、映画、テレビ、新聞、インターネット、美術史から選び取ったイメージを、圧倒的なスケールの木炭画や複合立体へ変換してきたアメリカの美術家です。1980年代の代表作《Men in the Cities》では、スーツやドレスを着た若者たちが白い背景の中で撃たれたように身体を反らせ、踊っているようにも倒れかけているようにも見えます。2000年代以降は波、鮫、爆発、惑星、虎、美術史上の名画、報道写真、抗議運動、戦争、災害などへ主題を広げました。それでも作品の核は大きく変わっていません。私たちの周囲を高速で通り過ぎるイメージを一度止め、巨大化し、手で描き直すことで、その像をもう一度見直す時間を作ることです。
ロンゴは一般に「写真のように精密な木炭画」で知られます。しかし本人は、自作を単純なフォトリアリズムとは考えていません。元画像をそのまま忠実に写すのではなく、複数の写真を参照し、切り取り、拡大し、明暗を強調し、ときには不要な情報を削除して、より強く作用する像へ再構成します。Milwaukee Art Museumは近年の作品について、さまざまな媒体から得た情報と美術史的な構図を組み合わせ、作家自身が「完全なイメージ」と考える状態へ近づけると説明しています。したがって、ロンゴの精密さは現実への忠実さではなく、現実を伝えるイメージがどのように編集されるかを意識させるものです。
この問題は1970年代の出発点から続いています。Buffalo State College在学中、Paul SharitsやHollis Framptonを通して実験映画とSergei Eisensteinのモンタージュ理論に触れ、Charles Cloughらとアーティスト運営スペースHallwallsを立ち上げました。1977年にニューヨークへ移ると、Douglas CrimpがArtists Spaceで企画した《Pictures》展へ参加します。新聞、広告、映画、テレビなど「すでに存在する像」に囲まれた世代が、ミニマリズムやコンセプチュアル・アートとは異なるかたちでイメージへ戻っていく契機となった展覧会です。後にCindy Sherman、Richard Prince、Sherrie Levine、Louise Lawlerらとともに「Pictures Generation」と呼ばれる文脈の中心に位置づけられました。
ただし、ロンゴは既存写真をそのまま再提示するアプロプリエーションの作家ではありません。《Men in the Cities》の原型写真は自ら撮影しました。友人や周囲の若者を屋上へ呼び、身体を突然動かさせたり、物を投げて反射的な姿勢を引き出したりし、その一瞬を写真にします。そこから投影装置を使って紙へ拡大し、木炭や黒鉛で描き直しました。写真、映画の一コマ、広告イラスト、ダンス、暴力のイメージが一つの身体へ重なっています。完成した人物は個人の肖像でありながら、白い背景によって都市生活の匿名的な記号にも変わります。
1980年代半ばには、紙上の人物と金属・木材・機械を衝突させた《Combines》へ進みます。《Pressure》では巨大な建築物の立体部分が人物画の上に重くのしかかり、《Body of a Comic》では写真のライトボックスと回転する黒いドラムが組み合わされます。ロンゴはEisensteinのモンタージュから、二つの異質なものを並べると、それぞれとは異なる第三の意味が生まれるという考えを受け取りました。絵と立体、静止と運動、身体と機械を「一つに調和させる」のではなく、衝突させることが重要でした。
1990年代には《Black Flags》《Bodyhammers》など、旗、銃、都市、権力を連想させる物体へ関心を広げ、映画や音楽映像も制作します。1995年にはWilliam Gibson原作、Keanu Reeves主演の映画《Johnny Mnemonic》を監督しました。映画制作後に制作の方向を見失った時期を経て、1996年には一年間、毎日一枚ずつ小さなドローイングを制作する《Magellan》へ戻ります。366枚にわたる新聞、映画、音楽、暴力、動物、身体、キス、スポーツ、事故などの断片は、その後の制作で繰り返し現れる主題の辞書となりました。
1999年から2008年頃にかけては、木炭にほぼ集中した《The Essentials》を展開します。巨大な波、鮫、爆発、惑星、薔薇、眠る子ども、そしてSigmund Freudの診察室と住居など、一見ばらばらな主題を「人間の集合的な記憶に作用する基本的な像」として描きました。ここで現在のロンゴを特徴づける、白い紙の上に深い黒を何層も重ね、消しゴムで光を彫り出すような木炭表現が大きく発展します。
2010年代には美術史そのものも対象になります。《Gang of Cosmos》ではPollock、Rothko、Newman、Krasner、Mitchell、Frankenthalerら抽象表現主義の絵画を白黒の木炭画へ変換しました。色彩と絵具の厚みで知られる作品を、モノクロの線と明暗へ置き換えることで、原作では見落とされやすい筆触、カンヴァスの織り、絵具の盛り上がりを別の方法で可視化します。2015年以降の《Hungry Ghosts》では、名画の表面ではなくX線写真を描き、修正、塗り直し、下層の構図といった「完成作の内部」を作品化しました。
2014年から始まった《The Destroyer Cycle》では、ニュースやインターネットから得た現代の出来事を中心に扱います。抗議する人々、警察、難民、戦争で破壊された都市、国旗、政府機関、環境危機、氷山などです。ここでロンゴは報道写真を再現するのではなく、一瞬で消費されるニュース画像を数週間から数か月かけて描き、数メートルの画面へ引き伸ばします。情報が次々と更新される時代に、見る速度を意図的に遅くするのです。
2024–25年のMilwaukee Art Museum《The Acceleration of History》、2025年Louisiana Museum of Modern Art、Pace New York《The Weight of Hope》では、この近年の大規模木炭画が改めてまとめられました。そして2026年、東京のPace Galleryで《Angels of the Maelstrom》を開催。日本では1995年以来約30年ぶりの個展となり、Paul Klee《Angelus Novus》とWalter Benjaminの「歴史の天使」を起点に、波、虎、鯨、国旗、John F. Kennedy、Elvis Presley、そして大谷翔平を描いた《Untitled (American Samurai)》などを発表しました。若い頃に映画と新聞写真から出発した作家が、現在も「歴史をどのような像として記憶するのか」という問題を更新し続けています。
CONTENTS
- 生涯と制作の変遷
- 1970年――ケント州立大学銃撃事件と報道写真
- フィレンツェ――保存修復から制作へ
- バッファロー――実験映画とHallwalls
- 1977年《Pictures》――像へ戻る世代
- 《Men in the Cities》――撃たれる身体、踊る身体
- Cindy Shermanと屋上で撮影する
- なぜ背景が真っ白なのか
- 《Combines》――像と物体を衝突させる
- ロバート・ロンゴの作品をどう見るか
- 主要作品
- 《Body of a Comic》――静止画に機械的な時間を入れる
- 音楽、パフォーマンス、映像
- 《Black Flags》と《Bodyhammers》――国家と武器の形
- 《Johnny Mnemonic》――ハリウッドを経験する
- 《Magellan》――366枚から制作を再起動する
- 木炭――黒を積み、白を彫る
- 《The Essentials》――波、鮫、爆発、惑星
- 《Freud Cycle》――理性の部屋と歴史の暴力
- 巨大化――写真より大きく、ニュースより遅く
- 《Gang of Cosmos》――抽象表現主義を白黒で描く
- 《Hungry Ghosts》――名画のX線を描く
- 《The Destroyer Cycle》――ニュースを止める
- 《Proof》――ゴヤ、エイゼンシュテイン、ロンゴ
- 政治的イメージを描くこと
- 自然――波、虎、氷山は何を意味するのか
- 《The Acceleration of History》――現在を歴史に変える
- 2025年――《The Weight of Hope》と《We are the Monsters》
- 2026年――東京《Angels of the Maelstrom》
- ロバート・ロンゴは何を変えたのか
- 略年譜
- 参考資料・出典
生涯と制作の変遷
1953年、ブルックリンに生まれる
ロバート・ロンゴは1953年1月7日、ニューヨークのBrooklynに生まれ、Long Islandで育ちました。Whitney Museum、MoMA、Pace Galleryはいずれも1953年生まれのアメリカ人作家として記録しています。幼少期から映画、テレビ、漫画、新聞など大量の複製イメージに囲まれた世代であり、この視覚環境は後の制作に大きく関わります。
1970年、ケント州立大学銃撃事件
高校卒業の年である1970年、Ohio州Kent State Universityで、Cambodia侵攻に反対する学生運動に対して州兵が発砲し、学生4人が死亡しました。ロンゴの公式略歴は、報道写真に写った死亡学生の一人が以前の同級生だったことが、彼の「メディアを通して歴史を見る」感覚へ長期的な影響を与えたとしています。
ここで重要なのは、後年の政治的作品をこの一事件から単純に説明することではありません。むしろ、現実の出来事が一枚の報道写真によって社会的記憶へ変わるという経験が、ロンゴの制作で何度も反復されることです。現実、写真、記憶の間には常に編集と距離があります。
1972年、フィレンツェへ
1972年に助成を得てFlorenceで保存修復と美術史を学びました。しかしヨーロッパの美術館を巡り、過去の作品を保存するより自分自身で作品を作りたいと考えるようになります。公式略歴は、この時期にOld MastersとModern Mastersを集中的に見た経験が、その後の美術史との対話の基盤になったと説明しています。
ロンゴは後にPicasso、Goya、Rembrandt、Pollock、Rothko、Newman、Krasner、Mitchellなどの作品を自作の対象にします。若い頃から「新しさのために過去を切る」のではなく、過去の画像を現在へ持ち込み直す姿勢が形成されました。
1973–75年、Buffalo State College
1973年秋、State University College at Buffaloへ入学し、1975年に卒業します。Paul SharitsとHollis Framptonのもとで実験映画を学び、Sergei Eisensteinの映画とモンタージュ理論へ強い関心を持ちました。
映画はロンゴの制作を理解するうえで重要です。《Men in the Cities》は一枚ずつ独立した人物画ですが、複数並ぶと映画の連続した静止画のように見えます。《Combines》では複数要素の衝突がモンタージュのように働きます。近年の報道写真を用いた作品でも、一枚の画像を「出来事全体」とみなすのではなく、映画の一フレームのように、その前後を想像させる構造が続きます。
1974年、Hallwallsを設立
BuffaloではCharles CloughとともにHallwallsの立ち上げに中心的に関わり、Cindy Sherman、Nancy Dwyer、Diane Bertolo、Michael Zwackら若い作家たちと活動しました。Hallwalls公式史によれば、旧製氷工場のスタジオ前の廊下から始まり、地元作家の展示だけでなく、Vito Acconci、Robert Irwin、Bruce Nauman、Richard Serraら外部作家との交流を積極的に作る場となりました。
Hallwallsは単なる若手の展示会場ではありません。音楽、映画、映像、パフォーマンス、文章を横断する環境であり、ロンゴ自身も1975–76年に紙作品、空間作品、パフォーマンスを発表しています。彼が後に一つの媒体へ限定されなかった背景には、この初期環境があります。
1977年、New Yorkへ移住
LongoはCindy ShermanとともにNew Yorkへ移り、Vito AcconciやDennis Oppenheimのstudio assistantとして働きました。同年、Douglas CrimpがArtists Spaceで企画した《Pictures》展へ参加します。
この展覧会は、若い作家たちが「新しい形」を作るより、映画、広告、テレビ、雑誌など既存の像が私たちの現実認識をどう組み立てるかへ注目していたことを可視化しました。後世の「Pictures Generation」という言葉は、この展覧会とCrimpの論考を基点として定着します。
1979–83年、《Men in the Cities》
ロンゴの名を広く知らしめた《Men in the Cities》は1979年頃から1983年にかけて展開されました。Whitney所蔵作品の解説では、シリーズは44点のlarge-scale charcoal/graphite drawingsからなり、男女が白い背景の中で極端な角度に身体を曲げます。
人物はスーツ、白いシャツ、黒いdressなど、New Yorkのprofessional cultureやdowntown fashionを思わせる服装です。しかしofficeもstreetも描かれません。都市を示す背景がなくても、タイトルと服装だけで「city」が立ち上がります。人物の身体そのものが都市の緊張を背負います。
1981年、Metro Pictures初個展
1980年にJanelle ReiringとHelene Winerが設立したMetro Picturesは、Pictures Generationの作家たちを市場へ紹介する重要なgalleryとなりました。Longoは1981年に最初の個展《Men in the Cities》を開催し、大型ドローイングを発表します。
人物の劇的なposeとgraphicな白黒表現は、1980年代New Yorkの美術、fashion、音楽映像の視覚言語とも共鳴しました。同時に、作品が「格好よい都市人」として消費されることと、暴力・支配・不安を含むイメージであることの間には緊張があります。この両義性はLongo作品の大きな特徴です。
1982–84年、《Pressure》と《Body of a Comic》
MoMA所蔵《Pressure》は、描かれた人物と巨大な黒い建築的立体を組み合わせた二部構成の作品です。Longoは当時New Yorkの金融街で、巨大な高層ビルの下を人々がうつむいて歩く光景を見ていました。MoMAの音声解説では、建物の上部を見ることを「自由の行為」のように感じたと本人が振り返っています。
1984年の《Body of a Comic》では、写真のライトボックス、モーター、タイマー、回転する黒い鋼製ドラムを組み合わせました。Robert RauschenbergのCombinesへの参照を明示しながら、静止した写真へ機械的な運動と時間を挿入します。
1986年以降、社会的象徴と映像へ
1980年代半ばには《Monument to the Homeless》《All You Zombies: Truth Before God》など、社会的・宗教的な語彙を持つ作品が増えます。同時にLongoはrock music、stage design、music videoにも関わり、drawingsだけでなくmoving imageの制作を継続しました。Pace Galleryの2026年資料は、1980年代にRichard Princeとのband Menthol WarsでNew Yorkのrock clubsに出演し、New OrderやR.E.M.のmusic videosを手がけたことを紹介しています。
この時期の活動を知ると、《Men in the Cities》の人物がなぜ静止画でありながら音楽的に見えるのかが理解しやすくなります。Longoは身体を「portrait」としてではなく、beat、impact、pauseを含む時間的なgestureとして捉えていました。
1990年、《Black Flags》
1990年にはMetro Picturesで《Black Flags》を発表しました。American flagという強力な国家記号を黒い物体へ変換し、色による即時的なnational symbolismを外します。旗を政治的記号として読む前に、fold、weight、surfaceを持つobjectとして見せる方法です。
Longoはその後も国旗を繰り返し描きます。2023年《Ascending Flag》、2026年《Ripped Flag in the Wind》まで続くことを考えると、旗は一時的な1990年代のmotifではなく、国家、共同体、希望、損傷を考えるための長期的な形になっています。
1993年、《Bodyhammers: Cult of the Gun》
1993年Metro Picturesでは銃器を中心に《Bodyhammers: Cult of the Gun》を展開します。gunを巨大化し、mechanical design、metal surface、grip、barrelを抽象的な形に近づけながら、そのobjectが実際にはweaponであることを消しません。
Longoの作品では、危険なものが視覚的に美しく見えてしまうことがしばしばあります。その魅力を消して道徳的なillustrationへ変えるのではなく、viewerが惹かれること自体を緊張として残します。この方法は後のfighter jet、police gear、bullet holeにも続きます。
1994–95年、《Johnny Mnemonic》
William Gibson原作の長編映画《Johnny Mnemonic》を監督し、Keanu Reeves、Takeshi Kitanoらが出演しました。大規模なcommercial film productionで多くの人員・資本・studio systemを扱う経験は、それまでのartist-centeredな制作と大きく異なりました。
Longoは後年、このHollywood experienceを困難なものとして振り返り、その後自分のstudio practiceを立て直す必要があったと語っています。大きなsystemを経験した後、一日一枚の小さなdrawingというもっとも単純なruleへ戻ったのが《Magellan》です。
1996年、《Magellan》
閏年の1996年、Longoは一年間毎日一枚、計366枚のsmall drawingsを制作しました。rock concert、murder scene、sports、animals、superheroes、plants、riot police、eyes、mouths、people kissing、mourningなど、mediaから拾ったimageを同じformatへ変換します。
Longo自身はこのseriesを、その後の制作の「lexicon」になったと説明しています。巨大作品へ進む前に、世界の像を一日一枚ずつ自分の手に通したarchiveです。現在の作品に登場する波、身体、暴力、自然、政治的imageの多くは、この時期にすでに小さなdrawingとして一度扱われています。
1999–2008年、《The Essentials》
1999年頃からは木炭へ制作を集中し、《The Essentials》と呼ぶcycleを展開します。波、鮫、bomb、planet、nebula、rose、sleeping child、Freudの部屋など、一見すると共通しないsubjectが並びます。
Longoはこれらをcreation mythやGenesisのような枠組みで考え、人間のcollective unconsciousへ作用する根源的なimageとして扱いました。自然の圧倒的な力と、人間のreason、violence、innocenceが同じvisual universeへ入ります。
ここで確立したcharcoal techniqueは、後のDestroyer Cycleの基礎になります。写真を拡大して描くことより、黒の密度とpaperの白を使ってimageを再構成することが重要になります。
2000–04年、《Freud Cycle》
《Freud Cycle》は1938年、Sigmund FreudがNazisを逃れてLondonへ移住する直前のViennaの診察室・住居写真を基にします。desk、door、chair、drapes、bookshelfなど、人物のいない室内が巨大な木炭画になります。
Longoの公式資料は、Freudが人間精神の暗部を理解しようとしていた一方、窓の外ではNazismがその暗部を現実化していたという対比をseriesの背景として説明しています。静かなroom imageに歴史的なviolenceが「写っていないまま」存在します。
2005年、《Untitled (The Haunting)》
幅約3.66メートルの巨大なwave drawing《The Haunting》は、Longoの自然像を代表する作品です。Louisiana Museum of Modern Artの2025年展にも出品され、1978–2024年を横断する展示の重要作として位置づけられました。
波はphotographic sourceを基にしながら、HokusaiやTurnerなど美術史上のsublime landscapeも想起させます。white foamとdeep black waterのcontrastは、charcoal mediumの可能性を極端に引き出します。
2009–14年、《The Mysteries》
《The Mysteries》ではlightとmovementを中心に、church interior、forest、Einsteinのchalkboard、fighter pilotのhelmet、burkaを着た女性のeyes、caged tigerなどを描きます。政治、宗教、reason、natureを直接的なnarrativeで結ばず、archetypal imageの集積として一つのworldを作ります。
2014年、《Gang of Cosmos》
Metro Picturesの《Gang of Cosmos》では、Abstract Expressionismの著名作品12点を木炭で描き直しました。Jackson Pollock、Joan Mitchell、Robert Motherwell、Helen Frankenthaler、Norman Lewis、Mark Rothko、Ad Reinhardt、Lee Krasner、Willem de Kooning、Barnett Newmanらが対象です。
Longoはmuseumでoriginal paintingを観察し、photographをdigitalに加工したうえでdrawingへ変換しました。Metro Picturesは、paint surface、brushstroke、canvas weaveなど、原作で見過ごされやすいdetailsをmonochrome drawingによって可視化したと説明しています。
これは名画の単なるcopyではありません。color paintingをblack-and-whiteへ、fast gestureをslow laborへ、physical paintをcharcoal illusionへ変えるtranslationです。
2015年以降、《Hungry Ghosts》
《Hungry Ghosts》では、Louvre、MoMA、Courtauld Instituteなどの保存修復部門が保管するX-ray imagesをsourceにします。Leonardo da Vinci、Rembrandt、Van Gogh、Francis Baconなどの作品内部がdrawingへ変換されます。
X-rayは完成したsurfaceの下にある修正、別のpose、隠れたcompositionを見せます。Longoは「masterpiece」を完成した一枚のimageとしてではなく、decisionとrevisionを含むphysical objectとして捉え直します。
2014年以降、《The Destroyer Cycle》
2014年から開始した《The Destroyer Cycle》では、報道やinternetを通して流通する現代の出来事を中心に扱います。Ferguson police、protesters、refugees、riot police、bullet holes、government buildings、war damage、flagsなどが描かれます。
news mediaの役割は出来事を速く伝えることです。一方Longoは、その一瞬のimageを選び、何週間あるいは何か月もかけてdrawingへ変えます。速いsourceを遅いmediumへ変換することで、viewerにも長く見ることを要求します。
Milwaukee Art Museumは、Longoがsource photographsをそのままtraceするのではなく、複数imageやart-historical archetypeを組み合わせ、自分が「perfect image」と考える状態へ再構成すると説明しています。
2017年、《Proof》
Garage Museumで始まりBrooklyn Museumなどへ巡回した《Proof: Francisco Goya, Sergei Eisenstein, Robert Longo》では、Goyaのprints、Eisensteinのfilms/drawings、Longoのworksを並べました。三者は異なる時代とmediumでwar、violence、mass politicsをimageへ変えています。
LongoにとってGoyaとEisensteinは、単なるhistorical referenceではありません。Goyaからはcatastropheをimageへする倫理的・形式的問題を、Eisensteinからはmontageによる衝突の構造を学びました。
2019年、《State of the Union》
Milwaukee Art Museum所蔵《Untitled (State of the Union, Washington DC, USA, February 5, 2019)》は、2019年2月5日のアメリカ大統領一般教書演説の報道画像を基にした大型木炭画です。同館は、白い服を着た100人を超える女性下院議員の集団へLongoが注意を向けた作品として紹介しています。
個々のpoliticianのportraitというより、議場全体をstageとして描き、architecture、crowd、clothing、gazeの方向から政治的powerのvisual structureを考える作品です。
2020年、《Iceberg for Greta Thunberg》
高さ約3.23メートル、幅約4.83メートルの《Untitled (Iceberg for Greta Thunberg)》は、巨大な氷山を描く作品です。人間は一人も描かれませんが、titleによってclimate activismの文脈が入ります。
白い氷と黒い海はcharcoal drawingのformal challengeでもあり、environmental crisisとsublime landscapeの歴史が重なります。Longoの自然像がpolitical imageryと別系統ではないことを示します。
2022年、《The Three Graces》
《Untitled (The Three Graces; Donetsk, Ukraine; March 14, 2022)》は、戦闘で損傷したDonetskの店頭に並ぶ三着のwedding dressを描きます。Milwaukee Art Museumは2024年に本作を取得しました。
古典美術の「Three Graces」を思わせるtitleと、結婚・beauty・futureを象徴する白いdress、bullet damageが一つのcompositionへ重なります。art historyとphotojournalismを同じimage内で接続する近年の代表作です。
2023年、《Ascending Flag》
《Untitled (Ascending Flag)》は254×243.84センチのcharcoal drawingで、風の中で大きく波打つAmerican flagを描きます。Milwaukee展では近年の主要作品として展示されました。
色を持たないcharcoalによってred、white、blueが消えると、flagはまずfoldとlightを持つfabricとして現れます。symbolを一度objectへ戻したうえで、viewerがnational meaningを再び重ねる構造です。
2024–25年、《The Acceleration of History》
Milwaukee Art Museumは2024年10月25日から2025年2月23日まで《Robert Longo: The Acceleration of History》を開催し、過去約10年間のmonumental drawings、sculptures、videos約40点を紹介しました。The Destroyer Cycleを中心にHungry Ghosts、Gang of Cosmosなどがまとめられました。
2025年4月11日から8月31日にはLouisiana Museum of Modern Artで53点を集めた大規模展が開催され、1978–2024年の作品を通して、Men in the CitiesからFreud studies、current media imageryまでを一つのlong careerとして再構成しました。
2025年、《We are the Monsters》《The Weight of Hope》
Art Basel Unlimited 2025では《We are the Monsters (Four Parts)》を発表しました。Paceによれば、二つの新しいCombines、drawing、filmからなるmonumental multimedia workで、「絶え間ない即時性」にさらされる文化を検討する作品です。
同年9–10月のPace New York《The Weight of Hope》では、26 drawings、3 films、3 sculptures、33 studiesをgallery全体へ展開しました。近年のLongoがcharcoal drawingだけへ限定されず、再びfilm、sculpture、Combineを統合していることが分かります。
2026年、Pace Tokyo《Angels of the Maelstrom》
2026年4月16日から6月17日までPace Tokyoで《Angels of the Maelstrom》を開催しました。日本でのsolo exhibitionは1995年のIsetan Museum of Artのretrospective以来約30年ぶりです。
Paul Klee《Angelus Novus》とWalter Benjaminの「歴史の天使」が出発点となり、wave、submerged whale、tiger、flower、JFK、Elvis Presleyなどを展示しました。中心作《Untitled (American Samurai)》(2025)はLos Angeles Dodgersの大谷翔平を描き、Paceは日本とアメリカの文化交流を象徴するimageとして位置づけています。
1970年――ケント州立大学銃撃事件と報道写真
Longoの公式略歴がKent Stateのpress photographを重要な原点として挙げるのは、彼が「出来事」そのものより、出来事が一枚のimageとして社会的記憶へ変わる過程へ関心を持っているからです。多くの人は歴史的事件の現場にいません。newspaper、television、photographを通して知ります。
一枚の写真は出来事全体ではありません。撮影位置、frame、掲載面、captionによって意味は変わります。それでも特定のphotoが事件そのものの記憶を代表することがあります。Longoはそのpowerを疑いながら、同時に利用します。
フィレンツェ――保存修復から制作へ
Florenceで古典作品を直接見た経験は、後年のLongoが美術史をsource materialとして扱うことへつながります。ただしpastを引用して否定するのではなく、過去のartistが自分の時代をどのようにimage化したかを研究します。
Gang of CosmosやHungry Ghostsでは、masterpieceを遠いcanonとして守るのではなく、現在のartistがもう一度分解し、別mediumへ翻訳できるvisual materialとして扱います。
バッファロー――実験映画とHallwalls
Hallwallsは制作、展示、curation、discussion、music、filmが分離していない環境でした。若いLongoは自分の作品を見せながら、外部artistを招き、別世代のpracticeへ直接触れました。
Paul SharitsとHollis Framptonから学んだstructural filmの視点も重要です。filmをstoryだけでなく、frame、duration、projection、sequenceとして考える態度はdrawingへ持ち込まれます。
Men in the Citiesは連続するfilm stillsのように見えますが、統一したstoryがありません。viewerはgestureの原因と結果を想像し、空白を補います。
1977年《Pictures》――像へ戻る世代
Douglas Crimpの《Pictures》展は、1970年代末の若い作家たちがimageへ戻る動きを早くから可視化しました。Longoは5人の参加作家の一人でした。
これはfigurative artへの単純な復帰ではありません。television、film、advertising、newspaperによって「すでにimage化された世界」をどう扱うかが問題でした。
Longoの独自性は、そのmedia critiqueへdrawingのphysical laborを持ち込んだことです。mass-produced photoをsourceにしながら、完成作はきわめてslowでhandmadeです。
《Men in the Cities》――撃たれる身体、踊る身体
Men in the Citiesの人物は撃たれたようにもdanceしているようにも見えます。このambiguityが作品を一義的なviolence sceneから遠ざけます。gunshot、punk dance、fashion pose、cinematic gestureが一つのbodyへ重なります。
series名は「都市の男たち」ですが女性も多く登場します。1980年代New Yorkのyoung professionalsとdowntown artistsのclothing codeが混ざり、individual portraitがanonymous urban typeへ変わります。
Cindy Shermanと屋上で撮影する
Whitney所蔵《Untitled (Cindy)》は、LongoがCindy ShermanとManhattanのloft屋上で撮影したsource photographです。Shermanはwhite shirtとdark skirtを着用し、合図に合わせて急激に身体を動かしました。
Whitneyは、Longoがmodelsへ「jerk, fling, twist, fall」と指示し、ときには身体へ物を投げ、撃たれたような反射を引き出したと紹介しています。完成drawingの「偶然の瞬間」は、実際には慎重にstagedされたimageです。
なぜ背景が真っ白なのか
source photographsにroof、bridge、skyが写っていても、drawingsでは人物だけが残ります。場所を消すことでbodyのgestureはspecific eventから切り離され、iconに近づきます。
commercial illustrationにも似たgraphic clarityがあります。しかし商品や理想的modelではなく、姿勢を崩したbodyを置くことで、advertising-like surfaceにinstabilityを導入します。
《Combines》――像と物体を衝突させる
Combinesはdrawing、photograph、wood、steel、Plexiglas、motor、lightを一つのwall workへ統合します。名称はRauschenbergへの参照ですが、LongoはEisenstein的montageを強く意識しました。
異なるelementsを調和させるのではなく、衝突させてthird meaningを生む。《Pressure》ならbuildingとbody、《Body of a Comic》ならphotographとmachineです。
2025年《We are the Monsters》でCombineを再び使ったことからも、この方法が1980年代だけの形式ではなく、Longoが必要に応じて戻る基本構造であることが分かります。
ロバート・ロンゴの作品をどう見るか
最初は「写真のようだ」という印象をそのまま受け止め、その後できるだけ近づいてpaper surfaceを見ると作品の構造が分かります。blackは一色ではなく、charcoalを重ね、擦り、消し、再び重ねた層です。whiteはpaintではなくpaperの白が残されている場合が多くあります。
次にsourceの種類を確認します。Longo自身が撮った写真、news photograph、film still、art-historical reproduction、X-rayでは、同じdrawing methodでも扱うauthorityが違います。
三つ目にscaleです。phone screenでは精密なmonochrome imageですが、実物はviewerの身体より大きい。source photoの「見る距離」が完全に変わります。
最後に、作品が何を説明していないかを見ます。Longoはnews captionのようにcauseとconclusionを与えません。sourceを巨大化する一方、contextの一部を削ります。viewerはbeauty、violence、power、fearの間で自分のreadingを作る必要があります。
主要作品
1977年《The American Soldier》から《Men in the Cities》《Pressure》《Body of a Comic》、1990年代を経て確立した巨大木炭画、《Freud Cycle》《Gang of Cosmos》《Hungry Ghosts》《The Destroyer Cycle》、そして2025–26年の最新作まで、ロバート・ロンゴが「像を選び、止め、描き直す」方法をどのように拡張してきたかが分かる12点を選びました。
アメリカの兵士
The American Soldier / 1977 / エナメル・鋳造アルミニウム / 71.1 × 40.6 × 12.7 cm
Metro Pictures collection / The Metropolitan Museum of Art《The Pictures Generation》出品記録
1977年《Pictures》前後の初期作。兵士という社会的類型を鋳造アルミニウムの立体へ変換しています。Metropolitan Museumの《The Pictures Generation, 1974–1984》で紹介され、LongoがMen in the Cities以前から写真・映画的な社会像を立体と結びつけていたことを示す作品です。
無題(シンディ)
Untitled (Cindy) / 1980(1998年プリント) / 銀色素漂白方式プリント / シート 107.2 × 76 cm/画像 101.3 × 68.3 cm
Whitney Museum of American Art, New York
《Men in the Cities》の大型ドローイングのためにLongo自身が撮影したsource photograph。Cindy ShermanがManhattanの屋上で腕を上げ身体をねじっています。Whitneyは、Longoがmodelへ突然身体を動かすよう指示し、ときには物を投げて反射的なgestureを引き出したと説明しています。
無題
Untitled / 1981 / 黒鉛、ポスターカラー・紙 / 237.5 × 148 cm
Whitney Museum of American Art, New York
《Men in the Cities》の代表的large-scale drawing。黒いskirtとheelsの女性が額へ手を当てて前へ踏み出し、白い背景の中に身体だけが浮かびます。Whitneyは同seriesを44点の大型drawingとして説明し、複数並ぶと物語を再構成できないfilm stillsの連続のように見えるとしています。
プレッシャー
Pressure / 1982–1983 / ラッカー仕上げの塗装木材、木炭、黒鉛、インク・紙、2部分 / 260 × 228.6 × 92.7 cm
The Museum of Modern Art, New York
人物のdrawingと巨大な黒い建築的立体を組み合わせた初期Combine。立体部分が人物へ実際の影を落とし、skyscraperによる心理的・身体的圧力を物質化します。MoMAの音声解説でLongoは、金融街の高層建築を見上げることを一種の自由の行為として感じたと振り返っています。
コミックの身体
Body of a Comic / 1984 / 塗装鋼製ドラム、モーター、タイマー、ライトボックス内の写真 / 304.8 × 289.6 × 121.9 cm
Whitney Museum of American Art, New York
下部の写真ライトボックスと、上部で回転する三本の黒いsteel drumsを組み合わせたCombine。写真にはbongoを叩く人物の手が写り、機械部分は断続的に作動します。WhitneyはRobert RauschenbergのCombinesへの直接的参照を指摘しています。
すべてのゾンビたち:神の前の真実
All You Zombies: Truth Before God / 1986/2012、2012年鋳造 / ブロンズ / 約 404.2 × 154.3 × 156.8 cm
Whitney Museum of American Art, New York
1980年代半ばのLongoがdrawingだけでなくmonumental sculptureへ制作を広げていたことを示す作品。高さ4メートルを超えるbronzeによって、人間像、宗教的な題名、monumentの権威が結びつきます。1986年の構想を2012年にcastした作品としてWhitneyに収蔵されています。
無題(フロイトの机と窓、1938年)
Untitled (Freud’s Desk by Window, 1938) / 2004 / 木炭・マウント紙 / 182.9 × 236.2 cm
《Freud Cycle》
1938年のSigmund Freud邸・診察室の記録写真を基にする《Freud Cycle》の代表作。deskとwindowだけが描かれ、人間は不在です。Longoは、psychoanalysisによって人間精神の暗部を理解しようとするFreudの室内と、Nazismが進行していたViennaの歴史的状況を対置しました。
無題(ザ・ホーンティング)
Untitled (The Haunting) / 2005 / 木炭・マウント紙 / 226.1 × 365.8 cm
Private Collection/Louisiana Museum of Modern Art 2025出品
巨大なcresting waveを描くLongoの自然像を代表する一作。幅3.6メートルを超え、白いpaperと深いcharcoal blackによって水のfoam、mass、lightを構築します。Louisiana Museumの2025年大規模展でも歴史的な主要作として展示されました。
《Body of a Comic》――静止画に機械的な時間を入れる
《Body of a Comic》では、下部のライトボックスにボンゴを演奏する人物の手が写り、上部では三本の黒い鋼製ドラムがモーターで断続的に回転します。写真は静止しているのに、機械が時間を発生させます。
Whitneyの解説では、この写真はコメディアンAndy Kaufmanへのオマージュでもあり、ドラムの運動はLongoが「呼吸する横隔膜」のように考えたとされています。下部の身体は見えるのに音がなく、上部の機械は身体を欠くのに動く。身体と機械が上下に分割されます。
この作品はLongoが1980年代にdrawingだけでなく、soundの連想、motor、light、sculptureを積極的に扱っていたことを示します。後の巨大木炭画が静的だからこそ、初期の機械作品を知ると「静止したimageの中にmovementをどう感じさせるか」という一貫した問題が見えます。
音楽、パフォーマンス、映像
Buffalo時代のperformanceからNew Yorkのunderground club、music video、feature filmまで、Longoはmoving imageとsoundを制作の周辺ではなく中心的な経験として持ってきました。Paceの2026年資料は、1980年代にRichard Princeとのband Menthol WarsでNew Yorkのrock clubsに出演し、New OrderやR.E.M.のmusic videosにも関わったことを紹介しています。
Men in the Citiesの身体を「dance」として読めるのも偶然ではありません。punk/new wave cultureの切迫したgestureと、cinematic violenceが重なっています。
近年もfilmを捨てておらず、2025年《The Weight of Hope》には3本のfilmが含まれました。charcoal drawingがimageを遅くするmediaだとすれば、filmはtimeを直接編集するmediaです。Longoは両方を往復しています。
《Black Flags》と《Bodyhammers》――国家と武器の形
1990年代のBlack FlagsとBodyhammersでは、national symbolとweaponが作品の中心になります。flagもgunも日常的には「意味」が強すぎて、形そのものを見ることが難しいobjectです。
Longoはそれらをmonochrome化、巨大化、立体化することで、symbolを一度physical formへ戻します。gunならbarrel、grip、metal surface、weightが見え、flagならfabricのfoldやvolumeが現れます。
しかしformal beautyを強調することは、政治的・倫理的意味を消すことではありません。むしろviewerが「美しい」と感じてしまうことと、objectが持つviolent/national meaningを同時に経験させます。Longoはこのambivalenceを繰り返し利用します。
《Johnny Mnemonic》――ハリウッドを経験する
1995年公開《Johnny Mnemonic》は、William Gibsonのcyberpunk fictionを原作とし、Keanu Reevesが主人公を演じました。Longoにとって、巨大なindustrial productionの中でimageを作る経験となりました。
しかし本人は後年、このHollywood experienceを困難なものとして語り、その後いったん自分の制作方法を見失ったと振り返っています。ここから一日に一枚のdrawingを作るMagellanへ戻ったことが重要です。
大規模制作の後に最小単位へ戻る。この「後退して前進する」方法はLongoに繰り返し見られます。近年も1980年代のCombinesを再び使用しながら新作を作っています。
《Magellan》――366枚から制作を再起動する
Magellanでは、毎日一枚を作るというruleによって「何を描くべきか」という大きな判断を細分化しました。news、film、animal、sports、body、violence、love、popular cultureのimageを次々とdrawingへ変えます。
366枚を同じ重要度で並べることで、新聞のmurder sceneとsuperhero、kissとriot police、flowerとtortureが一つのvisual archiveへ入ります。この並列性はテレビやinternet feedにも近いものがあります。
Longo自身はMagellanを後の作品のlexiconと位置づけています。以後の巨大作品は、Magellanで一度小さく描いたtypeを何年もかけて拡大・深化していくようにも見えます。
木炭――黒を積み、白を彫る
Longoのcharcoal drawingは、写真を鉛筆で精密に模写する方法とは異なります。紙へcharcoalを重ねてdeep blackを作り、eraserで削るようにlightを戻します。本人は白い部分をpaper surfaceとして残し、最後の段階で消すことを「carving」に近い行為として説明しています。
そのためdrawingにはsculpturalな感覚があります。黒を置くことと白を削り出すことが、volumeを作ります。特にwave、smoke、fur、cloud、glass、metalのようにtextureが重要なsubjectでは、この方法が強く作用します。
studio assistantsも制作に関わりますが、Longoがsource selection、composition、toneを決め、最後の仕上げで全体を統合します。巨大化は単なるvirtuosityの誇示ではなく、一枚の小さなsource imageへ長時間のlaborを与える仕組みでもあります。
《The Essentials》――波、鮫、爆発、惑星
The Essentialsでは、人間社会のspecific eventより、collective unconsciousへ作用するようなimageが多く選ばれました。wave、shark、bomb、planet、rose、sleeping childは、説明がなくてもviewerがfear、beauty、destruction、innocenceを読み取れるimageです。
Longoはこれらを「absolutes」として扱いました。しかし普遍的symbolとして固定するより、photographic sourceから具体的textureを描き込みます。archetypeとspecific photographの間に作品があります。
この時期に確立した技法が、後のDestroyer Cycleでnews imageをmonumentalizeする基礎になります。
《Freud Cycle》――理性の部屋と歴史の暴力
Freud Cycleは、人間の不在によって逆にhistorical presenceを感じさせます。chair、door、desk、booksは静かですが、1938年というdateが作品へ大きな意味を与えます。
Freudがpsychoanalysisによってmindのhidden forcesを理解しようとしていた時、NazismがViennaで現実のpolitical violenceとして進行していました。Longoはそのparadoxへ関心を持ちました。
人物portraitではなくroomを描くことで、historyは直接説明されません。viewerはempty roomのcalmnessと、outside worldのviolenceを知識によって重ねます。imageが「写っていないもの」を想起させる方法です。
巨大化――写真より大きく、ニュースより遅く
Longoの近年作品はしばしば幅3~5メートルに達します。sourceは新聞、internet、video stillの小さなimageでも、drawingではviewerの身体を超えるscaleになります。
このsize changeによって、news imageのfunctionが変わります。newsでは数秒で情報を受け取るためのimageが、museumでは細部を時間をかけて見るobjectになります。grain、blur、pixel、reflectionまでdrawingのtextureへ変換されます。
Milwaukee Art Museumは、monumental scaleとtechnical precisionがviewerに立ち止まり、subjectについて考える時間を作ると説明しています。Longo自身も現代を「image storm」と呼び、その速度を遅くしたいと繰り返し語っています。
《Gang of Cosmos》――抽象表現主義を白黒で描く
Gang of Cosmosは一見するとparadoxicalです。PollockやRothkoの作品は「写真では分からない色と物質」が重要だとされるのに、Longoはそれをmonochrome drawingにします。
しかし目的はoriginalを代替することではありません。Metro Picturesは、Longoがactual paintingをmuseumで研究し、写真を加工し、paint surface、canvas weave、brushstrokeのdetailsをcharcoalへ翻訳したと説明しています。
《After Pollock, Autumn Rhythm》は幅4.57メートルに及び、原作のdrip paintingを一つずつ手でdrawingへ変えます。gesture paintingの速い身体性が、Longoの遅い描写へ変換される点が重要です。
ここではPictures Generationの問題がart historyへ戻ります。私たちは名画そのものよりreproductionを通して知ることが多い。そのreproductionをさらにdrawingへすることで、original/copy/memoryの関係を再び問います。
《Hungry Ghosts》――名画のX線を描く
Hungry Ghostsでは絵画の「見えている表面」を描きません。保存修復で使われるX-ray画像をsourceにし、canvasの下層、修正、別のpositionを描きます。
《X-Ray of The Mona Lisa》では、世界でもっとも見慣れた顔が奇妙なghost imageへ変わります。《X-Ray of Bathsheba at Her Bath》ではRembrandtが最終作で変更したbodyのpositionが見えます。
Longoはこのseriesを「imageの表面を超えたtruth」へ近づく試みとして説明しています。ただしX-rayがabsolute truthなのではありません。それもまた一つのtechnologyによるimageです。surface photographからX-rayへsourceを変えることで、「何をrealと呼ぶか」がさらに複雑になります。
《The Destroyer Cycle》――ニュースを止める
Destroyer Cycleのsourceは多くの場合、報道、television、internetを通して社会を流通したimageです。Ferguson police、St. Louis Rams players、riot police、refugees、bullet holes、protest signs、government buildingsなどが描かれます。
ここでLongoがjournalismと異なるのは、出来事の情報を速く届ける必要がないことです。むしろnews cycleが終わった後もimageを残します。何週間も描く間にsource imageを分析し、contrast、crop、detailを変えます。
そのため「drawingだからneutralになる」わけではありません。選ぶこと、拡大すること、削ること自体がinterpretationです。Milwaukee Art Museumも、彼がmultiple source imagesとart-historical compositionを組み合わせると説明しています。
《Proof》――ゴヤ、エイゼンシュテイン、ロンゴ
2016年Garage Museum、2017年Brooklyn Museumなどへ巡回したProofでは、Francisco Goya、Sergei Eisenstein、Robert Longoが並べられました。Longoが直接影響を受けた二つのhistorical sourceを展覧会として可視化したものです。
Goyaの《Disasters of War》は戦争の暴力をprintとして残し、Eisensteinはmontageによってpolitical conflictをfilmへ変えました。Longoはphotographic media environmentからimageを選び、charcoal drawingへします。
三者の共通点を「political art」とだけまとめるより、violenceをそのままrecordできないとき、imageの形式をどう作るかという問題で見る方が有効です。
政治的イメージを描くこと
Longoの近年作品には国会、抗議、警察、戦争、難民など政治的subjectが多く登場します。これらについては、作品が特定の政策や政党への投票判断を直接指示するものとしてではなく、media imageとpowerの関係を扱う作品として見る必要があります。
たとえば《State of the Union》では議場全体を描き、Milwaukee Art Museumは白い服を着た女性議員の集団にLongoが注目したと説明しています。《Three Graces》ではUkraineのwar damageがwedding dressesと対置されます。どちらもeventを一つのsymbolic compositionへ変換しています。
Longo自身は作品に政治的なedgeがあると語る一方、viewerへ説教することは避けたいとも述べています。imageを選ぶ態度は明確でも、作品のmeaningを一文のsloganへ閉じません。
自然――波、虎、氷山は何を意味するのか
Longoの自然像はnews/politicsから離れた休憩ではありません。wave、storm、iceberg、tiger、forestは、人間がcontrolできない力と、人間がsymbol化してきたnatureの両方を含みます。
《Iceberg for Greta Thunberg》のようにtitleによってenvironmental contextが明示される作品もあれば、《The Haunting》のwaveのように直接的なpolitical captionを持たないものもあります。
2026年Tokyo展ではHokusaiを思わせるwave、submerged whale、tiger、mountain、flowerがAmerican symbolsと並びました。nature imageもcultureによって読み替えられるという点が浮かびます。
《The Acceleration of History》――現在を歴史に変える
2024–25年Milwaukeeの展覧会title「The Acceleration of History」は、Longoの現在地をよく示します。現代ではeventが起きるとすぐimageが世界を回り、その直後には別のeventへ置き換えられます。
Longoはその速度に同調するのではなく、反対にslow drawingを作ります。sourceをdigitalに収集・編集する段階は現代的ですが、完成までのphysical laborは非常に遅い。
この「高速のsource/低速の制作」という矛盾が、Longoの21世紀の作品を1980年代Pictures Generationから連続させています。mediaはmagazineからinternetへ変わっても、社会がimageを通して現実を経験する問題はむしろ強くなっています。
2025年――《The Weight of Hope》と《We are the Monsters》
2025年Art Basel Unlimited《We are the Monsters (Four Parts)》では、二つのCombine、drawing、filmを一つの大規模projectへ統合しました。Paceは「relentless immediacy」に支配されるcultureを検討する作品と説明しています。
同年Pace New York《The Weight of Hope》は、Milwaukee展の続編的な位置づけで、26 drawings、3 films、3 sculptures、33 studiesという非常に大きな構成でした。
titleの「hope」は、近年のLongo作品を単にcatastropheのimage集として理解しないために重要です。violence、destruction、stormを描きながらも、それを記憶し、見続ける行為にhopeの可能性を置きます。
2026年――東京《Angels of the Maelstrom》
2026年Pace Tokyo展は、Longoの日本との関係を改めて前景化しました。1995年のIsetan Museum of Artを起点とするretrospective以来、日本では約30年ぶりのsolo showでした。
Paul Klee《Angelus Novus》とWalter Benjaminの「historyのangel」がconceptual starting pointとなり、pastのcatastropheとfutureへのmovementが展覧会全体をつなぎます。これはLongo自身の制作方法にも重なります。彼は常にpast imageを見ながら、それをcurrent imageへ変換します。
《Untitled (American Samurai)》で大谷翔平を描いたことも、celebrity portraitだけではありません。Paceは、American pastimeであるbaseballの中心人物となったJapanese playerを、Japan/Americaのcultural exchangeを象徴するsubjectとして位置づけています。
同展には2026年《Untitled (JFK & Jackie, Zapruder Still)》《Untitled (Ripped Flag in the Wind)》《Untitled (Bullet Hole)》も含まれ、歴史的映像、national symbol、violenceの痕跡が自然像と同じ空間に置かれました。Longoのvisual lexiconが半世紀を経てなお拡張していることを示しています。
ロバート・ロンゴは何を変えたのか
第一に、写真以後のdrawingを新しい位置へ置きました。photographを否定して「手描きの純粋さ」へ戻るのでも、photographをそのままcopyするのでもなく、写真をsourceとして徹底的に編集し、巨大なphysical objectへ変えました。drawingはphotographyに対抗するmediumではなく、photographic imageを再処理するmediumになります。
第二に、一瞬のgestureをmonumentへ変えました。Men in the Citiesでは0.数秒の身体反応を数メートルのdrawingへ引き伸ばし、近年ではnews footageの一frameをmuseum-sizeへ拡大します。時間的に短いものを物質的に長く残す方法です。
第三に、mass mediaとart historyを同じvisual archiveとして扱いました。news photo、Hollywood、Freudの室内写真、Pollock、RembrandtのX-ray、国旗、waveは、一見異なるsourceですが、すべて「すでにimageになった世界」として作品へ入ります。high/low、past/presentという区分を横断します。
第四に、monumentalityをheroic subjectだけに使いませんでした。bullet hole、damaged shop window、refugee boat、small gestureなどを巨大化することで、通常なら流れて消えるimageへ公共的な重さを与えます。
第五に、Pictures Generationを単なるappropriationの歴史にしませんでした。Longoの作品ではselectionと引用だけでなく、身体的なdrawing labor、film、sculpture、performanceが重要です。media critiqueとmanual skillが対立せず共存します。
そして最も重要なのは、「見る速度」を作品の問題にしたことです。1970年代はtelevisionとmagazine、現在はsmartphoneとsocial mediaへmediaは変化しましたが、人はますます大量のimageを短時間で消費します。Longoはその流れから一枚を取り出し、数週間あるいは数か月をかけて描き、viewerにも時間を要求します。彼の作品における技術的な精密さは、写真そっくりに描くこと自体が目的ではなく、忘れられそうなimageを再び凝視させるための速度変換装置なのです。
略年譜
- 1953
- 1月7日、New York市Brooklynに生まれる。Long Islandで育つ。
- 1970
- 高校卒業。同年のKent State University銃撃事件と、その報道写真がmedia imageへの関心に長期的な影響を与える。
- 1972
- 助成を得てFlorenceで保存修復・美術史を学ぶ。European museumsを巡り、制作を志す。
- 1973
- State University College at Buffaloへ入学。Paul Sharits、Hollis Framptonらからexperimental filmを学ぶ。
- 1974
- Charles CloughらとHallwalls設立。Cindy Shermanを含む若い作家たちと活動。
- 1975
- Buffalo State College卒業。Hallwallsでdrawing、installation、performanceを継続。
- 1976
- Hallwalls-affiliated artistsとしてArtists Space, New Yorkの展覧会へ参加。
- 1977
- Cindy ShermanとNew Yorkへ移住。Vito Acconci、Dennis Oppenheimのstudio assistantとして働く。Douglas Crimp企画《Pictures》へ参加。《The American Soldier》制作。
- 1979–1983
- 《Men in the Cities》を展開。友人らを撮影した写真を基にlarge-scale charcoal/graphite drawingsを制作。
- 1981
- Metro Picturesで初個展《Men in the Cities》。
- 1982–1983
- 《Pressure》。drawingと建築的立体を組み合わせる。
- 1983
- Whitney Biennial参加。国際的評価が拡大。
- 1984
- Metro PicturesでCombinesを本格発表。《Body of a Comic》制作。
- 1986
- 《All You Zombies: Truth Before God》《Monument to the Homeless》。音楽・映像活動も継続。
- 1987
- R.E.M.《The One I Love》などmusic videoを監督。film制作へ活動を拡張。
- 1990
- Metro Pictures《Black Flags》。
- 1993
- Metro Pictures《Bodyhammers: Cult of the Gun》。
- 1994–1995
- Hollywood film《Johnny Mnemonic》監督。
- 1995
- Isetan Museum of Art, Tokyoでretrospective。Ashikaga City Museum、Kirin Plaza Art Space, Osakaへ巡回。
- 1996
- 一年間毎日一枚、計366枚を描く《Magellan》を制作。
- 1997
- Metro Picturesで《Magellan》展。Venice Biennale参加。
- 1999–2008
- 木炭を中心とする《The Essentials》。wave、Freud、bomb、shark、planet、roseなどを展開。
- 2000–2004
- 《Freud Cycle》。1938年Freud邸・診察室の写真を基に大型木炭画を制作。
- 2002
- Metro Pictures《Monsters》。巨大なwavesを含む自然像を本格化。
- 2005
- 《Untitled (The Haunting)》。Kaiserring Award受賞。
- 2009–2014
- 《The Mysteries》。light、religion、nature、military、reasonを横断。
- 2012
- 《The Capitol Project》など政治的architectureを大規模drawingへ展開。
- 2014
- 《Gang of Cosmos》。Abstract Expressionismの名作12点をcharcoalで再制作。《The Destroyer Cycle》開始。
- 2015
- 名画のX-ray imagesを描く《Hungry Ghosts》開始。
- 2016–2018
- 《Proof: Francisco Goya, Sergei Eisenstein, Robert Longo》がGarage Museum、Brooklyn Museum、Deichtorhallen等へ展開。
- 2017
- Metro Pictures《The Destroyer Cycle》。大規模木炭画による同時代像を本格発表。
- 2019
- 《Untitled (State of the Union, Washington DC, USA, February 5, 2019)》制作。のちMilwaukee Art Museum所蔵。
- 2020
- 《Untitled (Iceberg for Greta Thunberg)》などenvironmental imageryを大規模化。
- 2022
- 《Untitled (The Three Graces; Donetsk, Ukraine; March 14, 2022)》制作。Pace Los Angeles《Sea of Change》。
- 2023
- 《Untitled (Ascending Flag)》《Untitled (Snow Storm Forest)》。
- 2024
- Albertina Museum、Milwaukee Art Museumで大規模展。《The Acceleration of History》は過去10年の約40点を紹介。
- 2025
- Louisiana Museum of Modern Artで53点を集めた展覧会。Art Basel Unlimited《We are the Monsters (Four Parts)》。Pace New York《The Weight of Hope》。
- 2026
- Pace Tokyo《Angels of the Maelstrom》。1995年以来約30年ぶりの日本でのsolo exhibition。《Untitled (American Samurai)》《Untitled (JFK & Jackie, Zapruder Still)》などを発表。
参考資料・出典
本ページはRobert Longo公式アーカイブ、Hallwalls Contemporary Arts Center、The Museum of Modern Art、Whitney Museum of American Art、The Metropolitan Museum of Art、Milwaukee Art Museum、Louisiana Museum of Modern Art、Pace Gallery、Metro Pictures等の美術館・アーティスト運営機関・作家公式資料を参照してART LIBRARYが独自に執筆しました。政治的・社会的事件を扱う作品については、作品の主題と作家・美術館による解説を区別し、出来事そのものの評価を作品解釈と混同しないよう記述しています。原文の全文翻訳ではありません。
- Robert Longo — Biography
- Robert Longo — Series Archive
- Robert Longo — Freud Cycle
- Robert Longo — Gang of Cosmos
- Robert Longo — Hungry Ghosts
- Robert Longo — The Destroyer Cycle
- Hallwalls — History
- Hallwalls — Robert Longo Archive
- The Museum of Modern Art — Robert Longo
- MoMA — Pressure, 1982–83
- Whitney Museum of American Art — Robert Longo
- Whitney Museum — Untitled, 1981
- Whitney Museum — Untitled (Cindy), 1980
- Whitney Museum — Body of a Comic, 1984
- Whitney Museum — Monument to the Homeless, 1986
- Whitney Museum — All You Zombies: Truth Before God
- The Metropolitan Museum of Art — The Pictures Generation, 1974–1984
- Milwaukee Art Museum — Robert Longo: The Acceleration of History
- Louisiana Museum of Modern Art — Robert Longo, 2025
- Metro Pictures — Gang of Cosmos, 2014
- Pace Gallery — Robert Longo
- Pace Gallery — The Weight of Hope, 2025
- Pace Gallery — Angels of the Maelstrom, 2026
- Pace Gallery — We are the Monsters (Four Parts), Art Basel Unlimited 2025
資料確認日:2026年10月1日 / ART LIBRARY